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運命のいたずら
翌日、令亜はいつもよりも早く起きて支度をしていた。
久遠と2人で出掛けると考えただけで緊張して口から何か飛び出して来そうな気持ちになる。
メイクをいつもの倍の時間をかけてし、髪もいい香りのヘアオイルを付けて綺麗に結んだ。
「…こんなんで…いいのかな…」
鏡に写るいつもと全く違う自分を見て照れ臭くなる。
時計を見ると既に10時近くで急いで外へ出ると丁度久遠が到着し、令亜の姿を見て固まった。
「あ、久遠…お…おはよ。…おかしいかな…。」
令亜は久遠の反応にオロオロしながら聞く。
「…いや…イイっす。マジ可愛いよ、令亜。似合ってる。」
久遠は恥ずかしそうに頬を赤くして答え、早く行こうと歩き出し令亜も着いて行く様に歩き出した。
「どこ行くの?」
令亜は少し歩くのが早い久遠に追いつく様に小走りになっていて少し息が切れていたが、令亜の声で久遠が直ぐに気付いた。
「ご…ごめん。早かったよな歩くの。」
「うん。早歩き過ぎ。競歩でもするの?」
令亜は久遠を見上げて恨めしく言うと久遠はまた笑い出す。
「ごめ…そうだよな。お前そんなおっきく無いから…」
「平均身長より+1センチありますけど?!」
「ああ、ごめんごめん。令亜に合わせて歩かなくちゃな。」
久遠は屈託の無い笑顔でそう言うと令亜の手を取った。
「え?」
「…あのさ…ほんとお前鈍い…いい加減気付いてくれ。」
「え?!何か展開早く無い?!」
令亜は少女漫画でもこんないきなりな展開になんてならないよ!とあたふたする。
「あのなぁ!6年も令亜に片想いしている俺の身にもなってくれよ!?そんな可愛いカッコして来てさ、ごめん。愛おし過ぎて気持ち抑え切れない!」
会って早々に久遠に告白され令亜は真っ赤になってまたオロオロし出した。
「あ…あの…私、昔と違うし…中学の頃みたいなキラキラ女子じゃないし…高校では落ちこぼれに近くて…大学も何とか入っただけで…」
「…それでもいい。俺は、お前が好きなの。明るかろうが、暗かろうが筒井令亜っていう女性が好きなんだ。」
久遠は令亜の手を掴んだままずっと答えを待つ様に見つめる。
「私は……あの…私も久遠がいい。久遠なら安心して一緒に居られる。」
令亜は真っ直ぐ久遠を見つめ、意を決して久遠の気持ちに応えた。
「じゃあ…俺の彼女に…?」
「はい!お願いします。」
令亜の気持ちを確認して久遠は令亜をぎゅっと抱き締めた。
「く…久遠?」
「大切にするから。令亜の事。」
「…うん。ありがとう、久遠。」
久遠は令亜と手を繋ぎ目的の場所へ向かった。
電車に乗り港街の駅で降り、久遠に手を引かれ歩いていると港街の遊園地に着いた。
「わ…遊園地だ。」
「ここのコースターがサイコーなんだよな。」
久遠は絶叫マシンに乗ろうと令亜を連れて来た。
「久遠…高所恐怖症じゃなかった?」
「お前やな事覚えてるな…」
「中学の時…皆んなで遊園地の話で盛り上がっていたら…キライって言っていたわよね?」
「…お前と乗りたいの。だから平気。」
「何それ?じゃあ、久遠が泣いたらイイ子イイ子してあげるね。」
「お願いします。」
笑い合ってコースター乗り場に並んだ。
クリスマスで人が多く、並び時間も長く令亜はスカートと言う事もあって寒くて震えていた。
「大丈夫か?令亜。」
久遠は令亜を後ろからバックハグした。
「こうしたらあったかいだろ?」
「これが噂の…バックハグですか…。生きてて良かった…。」
令亜はよく巷で聞く『バックハグ』を体験し、嬉しさに感動していた。
「…大袈裟だな。幾らでもしてやるよ?」
「やられ過ぎても…有り難みなくなるから遠慮しとく。」
「じゃ俺がしたい時にするよ。」
「じゃあ私もして欲しい時言うから。」
「オケ。」
2人で戯れ合っているとコースターの順番が回って来た。
カバンをロッカーへ入れてイスに座る。
「令亜、シートベルトきちんと付けたか?」
「うん、大丈夫。」
ベルトを付けた所で出発のブザーが鳴る。
係員達が手を振り行ってらっしゃーい!と言い、令亜と久遠も手を振る。
コースターはカタカタと音を鳴らしゆっくりと上昇して行く。
「うわー。ドキドキするね!」
遠目に綺麗な景色を見ながらワクワクして仕方ない。令亜は絶叫マシンが大好きで嬉しくてハイテンションだが隣に座る久遠は下を向いたままだ。
「俺、終わるまで上向けないかも。」
久遠は青ざめて吐きそうな状態になっている。
「うそ。マジ?久遠…ほんとにキライなんだ。止めれば良かったのに。」
令亜はワクワクし、久遠は今にも死んでしまいそうな状態で話していると、とうもう頂上まで来た。
次の瞬間もの凄い勢いでコースターは下降し令亜は楽しそうに叫び、久遠は悲鳴に近い叫びをあげる。
そして斜めの角度に入った時だった。
「え?」
令亜のシートベルトが緩み、次の瞬間ベルトが外れ体が浮く。
「やだ!は?何で?」
「え?令亜?どうした…」
久遠が令亜の方をチラッと見た瞬間、令亜は遠心力でコースターの外へ飛ばされて行った。
『女の子がコースターから落ちて来たぞーっ!!救急車ーっ!!』
遠くで人々が叫んでいる声が聞こえて来て、コースターは低い位置まで下降して直ぐに緊急停止した。久遠は恐る恐る隣を見るとやっぱり令亜が居ない。
声がする方を見ると地面に出血している女性が倒れている。
女性の着ている服を見るとさっき令亜が着ていた服と同じ服を着ている。
靴もショートブーツで令亜と同じ物だった。
久遠は何が起こったのか分からず、ただ呆然として血に塗れて倒れている令亜らしき女性を見下ろしていた。
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