運命のいたずら

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「う…うぅ…痛い…。もぉ、何?」  令亜はコースターから弾き出され8メートル下へ落ちて行き地面に叩きつけられた様に全身の骨がバラバラになったかと思うほどの激痛がしたのを覚えていたが……目が覚めると草原に寝転がっており、起き上がると見知らぬ景色が広がっていた。  身体も痛かったはずなのに痛くない。立ち上がるときちんと立てる。そして歩ける。 そして服が袴に変わっていた。髪は黒髪ストレートのロングヘアでハーフアップでリボンで止めていた。見た所とても育ちの良さそうなお嬢様の様な格好をしていた。 「え?あれ?私ジェットコースターから落ちて…何か地面に物凄い勢いで叩きつけられて…死んだのか?あ、死ぬって事は、ここ…天国なのかな?」 令亜は辺りを見回すが人が1人も居らず、遠くに建物が見えるが高層の建物が一つも見当たらない。 見慣れない景色ばかりだ。 とりあえず誰かに会えるだろうと思い令亜は草原を歩き出した。 歩いていると河原が見えて来る。 「三途の川かな?あー、やっぱりここはきっとあの世だ。はは…私の人生って何だったの?久遠に告白されて付き合う様になったその日にまさかのジェットコースタから転落して死亡って…ギャグかな?」 令亜は1人でぶつくさと言いながら歩き、あまりにも惨めに終わった自分の人生を憂いた。 「あー、柚葉にお礼も言えないまま死んじゃったよ!ケーキ屋の先輩もいつも助けてくれたな…裏で私の悪口言って居たの知ってたけど。トロイとか使えねーって。使いこなせてねーな!って言ってやれば良かった。そもそも教え方下手なんだよ!バカのくせに!」 令亜は次から次へとマイナスの事ばかり思い付き、毒づき気分が落ち込んで行く。 そして、令亜をずっと見捨てないで居てくれた大切な人を思い出す。 「久遠…今日さっき付き合うってなったばかりなのに…その日に彼女が死ぬって…トラウマ級だよね。しかも…多分遺体ヤバいよね?8メートル付近から落下って…医学部生の私でも状況ヤバいと思うわ…可哀想な事をしたな‥‥。もう少し並ぶの遅くしておけば良かった。」 後悔ばかり口にし続け令亜の目から涙がどんどん零れ落ちてきた。 「こんな事になるなら…高校も友達も与えられた環境で精一杯明るく元気よく頑張れば良かった…バイトも先輩に毒吐いてやれば良かった…お父さん、お母さん泣いてるだろうな…。お兄ちゃん…先立つ妹を…許して。」 「おい、何ブツクサ一人でさっきから喋ってんだよ?」 突然令亜は後ろから話しかけられ驚いて振り向くと…見た事のある顔があった。 「え…久遠?」 令亜が久遠の名前を言うと、話しかけて来た若者は訝しげな顔をして令亜を見た。 「は?久遠じゃねーし。瀬戸久(ひさし)だし。」 「え?」 「え?じゃねーぞ。ほら、早く戻るぞ。弓の練習ほっぽり投げて。的に当たらないからって拗ねて逃げんなよレイお嬢様。」 令亜はレイと呼ばれ、久と名乗る若者に言われるまま彼の後について行った。  彼に着いて行くと立派な門構えの洋館に着いた。 「何?ここ?」 「は?!レイ、お前自分の家も忘れたのかよ?!さっき出かけていた数十分の間に頭でも打ったのかよ?全く。」 令亜は心の中で(頭打ったどころか多分カチ割れて中身出てるわよきっと…)と毒付き、久の顔を冷めた目で見た。 「てか、あんた本当に誰よ。私は…何者?」 「は?!マジかよ?!頭大丈夫か?」 久は令亜の言葉に青ざめて来た。 「大丈夫じゃないわよ!てか今年号何?!何年?!何であんたもそんな格好してんのよ?!周りも何か古臭い建物ばかりだし!皆着物ばっかだし!」 令亜は袴姿の久遠そっくりの久に怒り出し、状況を説明しろと騒ぎ出した。 「…今は明治3年10月30日。お前はこの家のお嬢様で筒井レイ。16歳。俺はこの家の使用人で瀬戸久。爺さんの代から代々続く使用人家庭だ。」 「…め…明治?!はぁ?!何の事?!私…令和4年に居たのに!」 令亜は当然の事ながらパニックになりだし、久はそんな令亜を唖然として見ていた。 「お前…とりあえず落ち着け。その、令和って何だ?」 「私が居た時代の年号。2022年よ。152年後の世界よ。」 「…まさか?!え?2022年?!お前未来とか言う所から来たとか言わねーよな?」 久はあり得ないと口をポカンと開け首を振る。 「…そうよ!!有り得ないわよ!!私さっき未来の早く走る列車から…高い所から転落したの!地面に叩きつけられて全身悲鳴もあげられないくらい痛くて…でも目が覚めたらあの草原に居たのよ。」 「え?お前死んだの?」 「知らないわよ!初めて出来た…しかもその日に付き合い始めた彼氏の目の前で落ちたのよ?!で、目が覚めたら明治時代?!どんな茶番劇よ!?」 令亜はパニックになって更に叫び出し、久はただただ唖然として話を聞いて気になった所で質問したりしていた。 「とりあえず…お前がオカシイのだけはわかった。」 「おかしくない!」 「声を荒げるな!兎に角先ずは落ち着こう。」 「これが落ち着いていられますか!?」 「やかましい女子だ…。」 「久遠と同じ瀬戸って…まさか久遠のご先祖様なの?!あんた?!」 令亜がまた叫ぶと久は令亜の口を押さえて木の陰へ連れて行く。 「お前は本当に叫ぶな!久遠って誰だよ……一つ言えるのは見た目と性格はレイ嬢そのままだ。けれど、話す内容がどれもキテレツ過ぎて…レイでは無いというのは分かった。」 「わかったなら、あの草原へ私を戻して?」 令亜は久に頼むが、久は首を横に振った。 「…無理な事を悟れ。」 「何でよ!?!?」 「お前はこの筒井家の令嬢だ。」 「だよね…って?!えーっ?!私このままこの時代に残らなきゃダメなの?!」 令亜はどうせならしっかりあの世へ行ける様に死なせてくれと涙がまた出て来た。
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