もしも・・・たら

　「今日ね、買い物帰りに信号待ちしてたら一組のご夫婦が散歩してたの。ちょうど私たちと同じ世代かな？二人とも笑顔ですごく幸せそうだったよ。ご主人が然り気無く車道側を歩いてさ。いいご夫婦なんだなって羨ましく思っちゃった。あなたも若いころは優しかったのにね。ねぇ、もし散歩したらあなたもあのご主人みたいに然り気無く車道側歩いてくれる？そしたら胸キュンしちゃうかもね。
なーんてね。あはは……

　もしも・・・たら……あんなに風に二人で笑いながら散歩できたのかな……。」

─“新郎、 あなたはこの女性を妻とし
　健やかなる時も 病める時も
　喜びの時も 悲しみの時も
　富める時も 貧しい時も
これを 敬い 慰め合い 共に助け合い
その命ある限り愛することを誓いますか？”

　『はい、誓います！』

─あの日から３０年が経とうとしている。

　私は今、
　健やかなる時も 病める時も
　喜びの時も 悲しみの時も
　富める時も 貧しい時も
　一人ぼっちだ。

　　　　　　──完──