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息が止まるかと思った。
「Copacabana」と流れるような横文字の
赤いネオンサインの下
少し身をかがめて
野良猫を撫でている
黒いボディコンシャスのミニドレス
ユリアを見た瞬間
俺は、声も出せず固まった。
今は2022年
ここは埼玉県、西小手指の
錆びれた駅裏のはずだ。
腰の高いプロポーションのユリアは
長いワンレングスの黒髪を
右手で器用に背中に払って
顔を上げた。
その横顔!
仕草もそのままなら
スタイルも髪も何もかも
30年前と全く変わりない。
1991年の夏の終わり。
麻布十番から飯倉に抜ける
狸穴(まみあな)坂のクラブ「コパカバーナ」で
最後にキスを交わしたあの晩と
全く変わらない姿。
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