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真っ暗な世界で、私は一人ボツボツと歩く。地面も地上も全てが黒く、光なんてものはここに存在しない。
自分がどこに向かって歩いているのかさえ分からない。分かるのはただ、自分の心が空っぽだということだけだ。
裸足のまま下を向いて歩いていると、誰かの足が私の前で止まったのが見える。ゆっくりと顔を上げると、何故か”私”が立っていた。思わず目を見開いてその場に立ち止まる。
”こんにちは、優愛。会えて嬉しいわ”
私の顔で、私と同じ声でニッコリと微笑んでくる。服装は私とは対照的な黒いワンピースを身につけていた。
恐怖に包まれ、全身に寒気が走る。
”ふふふっ、そんな顔してどうしたの~? もしかして、私が怖い? あははっ、あなたは私なのに……怖いなんて変なの”
彼女は、ケタケタと笑う。
「どうして、私がもう1人いるの……?」
”だって、私は普段、あなたの影ですもの”
「私の影……?」
”えぇ、そうよ”
目を細めて口角を上げる彼女を見て、額から冷や汗が流れる。しかし、彼女はすぐに真顔に戻った。
”でもさー、私あなたの影でいるの飽きちゃったんだよね”
「……えっ?」
彼女は私の顔を見て一度笑うと、私の横に来て立ち止まった。
”だから、私の前から消えてくれないかしら”
耳元で囁かれる冷たい声に私は身体が硬直し、額から冷や汗が流れる。その瞬間、私は心臓が締め付けられるように物凄い痛みを感じ、目の前が二重になって揺らぎ、思わず心臓を押さえた。
心がどんどんと黒く包まれていく感じがした。何の痛みなのか分からないまま、私は自分でも分からない涙が頬をつたっていく。
”あら、私の痛み、やっと分かってくれた?
……それ、ずっとあなたが私に押し付けていた苦しみよ? 光のあなたには何倍も痛いでしょうね”
私は痛みに耐えきれず、足の力が抜けてその場に座り込む。段々と痛みが増していき、涙が真っ暗闇の中に溶けていく。痛すぎるせいで声も出せない状況だ。
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