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「既にデザートってことは……夕飯はもう済ませたんだよな?」
「うん。ここのミートドリアもお気に入りでね、楽しみの三割はそっちかも」
「そっか……」
彼女がお楽しみ中のピーチパイは、もうすでに三分の二程度しか残っていない。
俺はここでコーヒーだけ飲んで、夕食は家で昨夜の残り物を片付けるつもりだった。が、これはチャンスだ。
「……俺は今から飯食うつもりなんだけど、よかったら同席していいか? デザートもう二皿分くらいなら奢るし」
「え、いいの!? じゃあお持ち帰りして食べるから、お会計の時によろしくお願いしまーすっ」
餌をぶら下げてではあったが、申し出た同席はすんなり受け入れてもらえた。
俺はほっと胸を撫で下ろし、にこにこ笑う彼女の正面に座る。
自分がパイを完食してからも、俺が注文したジェノベーゼを食べ終わるまで、彼女は待っていてくれた。明るい笑顔でコロコロ話題を展開させながら。
しかしもちろん会計時には、その切れ長の二重の瞳で、レジの横のショーケースに並ぶケーキをじっくりと吟味して。
「白桃のショートケーキと季節のタルト、一個ずつテイクアウトで!」
高額な二品を遠慮なく選んでくれた。生クリームの上に白桃が飾られたケーキと、いちごやキウイや黄桃がふんだんに盛られたタルトを。
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