12人が本棚に入れています
本棚に追加
そう時間が経たない内に警察が来て、男はパトカーに乗せられた。
俺達もその場で簡単な事情聴取を受け、しばらくしてから解放された。昼夜問わず無休のモノクロ車が、俺の腹に積もっていた重たいものを一緒に乗せて、夜道へ紛れ込んでいく。
もうすっかり暗い。そろそろ空に爆撃が咲く頃だろうが、もう誰も、呑気に祭りを楽しむ気分じゃなかった。
神社から出ようと、誰からともなく足を動かし始めた時だった。大きな木の後ろから、小さな影が駆け寄ってきたのは。
「あ、あのっ……」
「公平君? 何でここに……?」
丸めた目をぱちぱちさせたのは萌香だった。
首を斜めに動かす彼女を見て、公平君は気が抜けたように肩を撫でおろした。
「よかった、間に合って……萌ちゃん、何ともなくて……」
「公平君……その、お兄さんのこと……」
「兄ちゃんのことは大丈夫。いっつも外で悪いことばっかして、そのたびに父さんに謝らせて、母さんを泣かせて……兄ちゃんなんか、ずっとずっと、大っ嫌いだった……あんな奴、牢屋で反省すればいいんだ」
震える非力な手が、俺の手を強く握った。だけど、自信がなさそうに、気弱な顔は下を向く。
最初のコメントを投稿しよう!