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「春樹さん、ありがと。僕じゃ兄ちゃんに敵わなかったから……」
「公平君が呼びに来てくれたお陰だよ」
気付いてもらえなくても、俺は公平君に笑いかける。
あのタイミングで駆けつけに来てくれなかったら、もしかしたら取り返しのつかない事態になっていたかもしれない。この子には本当に助けられた。
「俺の方こそありがとう。あの人だかりの中で俺のこと探すの大変だっただろうに……萌香を守れたのは公平君のお陰だよ」
少しでも感謝が伝わるように、うつむきっぱなしの頭に手を添える。無理に顔を上げる必要はないけど、いつまでもうつむいてる必要もない。そう元気づけてあげたかった。
「そっか……公平君が春樹を呼んでくれたんだ。あたしからもありがとね」
萌香も俺の手に自分の手を重ねる。
その隣に、もう一つ、全く別の手が置かれた。
「俺からもありがとう。それから……ずっと、君の気も知らずに失礼な態度ばかり取っていてすまなかった。また萌香が里帰りした時はいつでも会いに来てやってくれ」
これまでの非礼を詫びながら、朋紀さんが色素の薄い髪をそっと撫でた。ものすごく優しい手つきで。
「……っよかったっ……今度は、僕も、萌ちゃん守れてっ……!」
いよいよ感情を留めきれなくなったんだろう。公平君は、わんわん声を上げて泣いた。
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