6:争えない血

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「さっき朋紀さんと話をしたんだけど……俺のこと、認めてくれたみたい」 「本当? 春樹なら大丈夫って思ってたよ。これからも私のことよろしくお願いします」 「それ朋紀さんにも言われたよ。こちらこそ、よろしくお願いします」  俺達は、しばらく無言で寄り添った。鈴虫の輪唱(りんしょう)が軽やかに耳を通り抜けていく。萌香となら、こういう静けさにいるのも心地いい。沈黙が全く気まずくない。  寄りかかってきたまま、華奢な手が俺の目の前に(かざ)した。さっき返した彼女の宝物を。落ちそうに揺れる、淡い桃を。 「この(かんざし)ね、お母さんの形見なの。あたし、お母さんのことほとんど覚えてないんだけど、これ見るたび、お母さんあたしのこと優しく抱きしめてくれたんじゃないかなって思うんだ。春樹が拾ってくれてて本当よかった……」 「そうだったんだ……うん。よかったよ。俺が見つけられて」  朋紀さんが怒っていたのはそういうことか。『お母さんが残してくれた物、ちゃんと大事にしろ』って意味だったんだ。  それから間もなくして朋紀さんも戻ってきた。ファミリー向けの箱入りアイスを手にして。  朋紀さんはピーチ、俺はチョコ、萌香はストロベリー。それぞれが選んだ味を楽しむ中、朋紀さんの口に運ばれていく薄桃色の塊を、何度か萌香が物欲しそうに見ていた。夢中になって手と口を動かす朋紀さんは全く気付かない。  好きな物には目がないところ、やっぱり血が繋がってるな。  俺は密かに笑った。
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