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軍会議
私は部屋の隅に椅子を用意してもらい、会議を聞いていたが、会議の途中で何の前触れもなく、イル王が部屋の中へ現れたので、周囲の者達は驚きを隠せずに、そのまま固まってしまっていた。
「返事が待てないので、直接聞きに来た」
近くにいる衛兵を押しのけて、軍会議を行っている大広間に乱入したイル王は、エリオット様を見つけると、大股で歩み寄った。
「ファーゴ王子を引き渡してもらおう。なぜ隠している?」
「イル王、隠し立てなど‥‥‥。ファーゴ王子は記憶喪失なのです。とてもではありませんが、王族の責務を全う出来るような状態ではありません」
「知っている‥‥‥。大精霊から聞いたからな」
「大精霊‥‥‥。まさか神話に登場する四大精霊ですか?」
「アイリス嬢は、『識る力』を持っていると聞いたが‥‥‥。会ったことがあるのではないか?」
「いえ、会ったことはありませんが‥‥‥」
「魔力は、イメージが形になることが多い。私の前では、これくらいの小さな生き物だが、対応する人物によって姿形を変えることもあるらしい。また、その存在自体が未知数で予言をすることもあると言われている」
イル王はジェスチャーで、サッカーボールより少し大きめの大きさを手で表現していた。
「精霊‥‥‥。大精霊‥‥‥。もしかして、小さな女の子ですか??」
「分からないが、地の精霊ノームでは? やはり会ったことがあるのではないか?」
「カルム国の初代国王、キースの幼少時代の幽霊だと思っていたのですが‥‥‥」
「おそらく初代国王ではないな‥‥‥。ユウレイ? は、よく分からないが、一般的には人知を超えた存在とされている」
「イル王に直接、お聞きします‥‥‥。今回の1件をファーゴ王子を処刑することによって、片をつけようと思ってませんか?」
「片をつけようと思っている‥‥‥。ただ、アイリス嬢が想像しているものとは、少し違うかもしれないな」
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