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生まれ変わり
「‥‥‥何を言ってるんだろう。と、思われたくなかったので、言いたく無かったのですが、サラは‥‥‥」
「サラは?」
「元妻の生まれ変わりではないかと‥‥‥」
「えっ、妻?」
「はい」
「‥‥‥はああああぁ?!」
オーベル様は、叫んだ私の口に手を当てて塞いでいた。
「ふぁっと‥‥‥。前世の奥さんって、幸子さん? 何でまた、そう思ったの? 歩き方?!」
以前に、オーベル様が私だと気がついたのは、歩き方が理由だったと、以前に聞いていた。
「それもありますが‥‥‥。何というか、雰囲気が似ているというか‥‥‥。まあ、有り体に言えば直感です」
「直感?!」
「それで、サラが‥‥‥。とか、言ってた訳ね」
「その事をサラは‥‥‥」
「知らないと思います。前に生きていた記憶なんて、おそらく彼女には無いでしょう」
「ん‥‥‥。まずくないかしら?」
「何がです?」
「いえ、何でもないわ‥‥‥」
サラは、騎士であるジルに憧れていたのだ‥‥‥。新しく護衛についたハンスに慰められたら、きっとひとたまりもないだろう。なんか‥‥‥。そんな気がする。
「オーベル様、明日の実験は昼過ぎからでいいのかしら? 午前中は、妃教育の講義があるのよね」
「承知致しました。では終わる頃、お迎えに上がります」
私は前世での従兄妹の恋の行く末が、曇っているような気がして心配になってしまった。
「オーベル様‥‥‥。私に、こんなことを言われたら、癪に障るかもしれないけど‥‥‥。サラ自身を見てあげて。彼女は、『幸子さん』じゃないのよ」
「分かっています。ただ思い出してしまうだけで‥‥‥」
オーベル様は、気落ちしていた。おそらく寝不足だけではなく、精神的な疲れも出てきているのだろう‥‥‥。人の恋路を邪魔しても良くないと思い、馬に蹴られる考えになる前に、私は2人に対する考えを振り払ったのだった。
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