生まれ変わり

1/1
前へ
/67ページ
次へ

生まれ変わり

「‥‥‥何を言ってるんだろう。と、思われたくなかったので、言いたく無かったのですが、サラは‥‥‥」 「サラは?」 「元妻の生まれ変わりではないかと‥‥‥」 「えっ、妻?」 「はい」 「‥‥‥はああああぁ?!」  オーベル様は、叫んだ私の口に手を当てて塞いでいた。 「ふぁっと‥‥‥。前世の奥さんって、幸子さん? 何でまた、そう思ったの? 歩き方?!」  以前に、オーベル様が私だと気がついたのは、歩き方が理由だったと、以前に聞いていた。 「それもありますが‥‥‥。何というか、雰囲気が似ているというか‥‥‥。まあ、有り体に言えば直感です」 「直感?!」 「それで、サラが‥‥‥。とか、言ってた訳ね」 「その事をサラは‥‥‥」 「知らないと思います。前に生きていた記憶なんて、おそらく彼女には無いでしょう」 「ん‥‥‥。まずくないかしら?」 「何がです?」 「いえ、何でもないわ‥‥‥」  サラは、騎士であるジルに憧れていたのだ‥‥‥。新しく護衛についたハンスに慰められたら、きっとひとたまりもないだろう。なんか‥‥‥。そんな気がする。 「オーベル様、明日の実験は昼過ぎからでいいのかしら? 午前中は、妃教育の講義があるのよね」 「承知致しました。では終わる頃、お迎えに上がります」  私は前世での従兄妹(いとこ)の恋の行く末が、曇っているような気がして心配になってしまった。 「オーベル様‥‥‥。私に、こんなことを言われたら、(しゃく)に障るかもしれないけど‥‥‥。サラ自身を見てあげて。彼女は、『幸子さん』じゃないのよ」 「分かっています。ただ思い出してしまうだけで‥‥‥」  オーベル様は、気落ちしていた。おそらく寝不足だけではなく、精神的な疲れも出てきているのだろう‥‥‥。人の恋路を邪魔しても良くないと思い、馬に蹴られる考えになる前に、私は2人に対する考えを振り払ったのだった。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

340人が本棚に入れています
本棚に追加