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誘拐された理由
「何か分かったの?」
「いえ、特には・・・ただ、アイリス様が寄付していた修道院には『アネッサ』という名前や『リーリャ』という名前の修道女は、いませんでしたね・・・カルム国の暗部にいたという情報から、暗部にも当たらせていますが、めぼしい情報はないみたいです」
「どうして、ファーゴ王子を攫ったのかしら?魔眼の力を持っているから?」
「これは私の個人的見解ですが、ファーゴ王子はまだ成人していないのに側室と妾が20人以上いて、一部の貴族から『税金の無駄遣いだ』と煙たがられています。だから、その・・・王子の存在を煙たがっている貴族が誘拐したのではないでしょうか?」
「もしくは、魔眼を狙われたとか・・・?」
「どうでしょう?本人以外に魔眼は操れないらしいのですが・・・なんとも言えませんね。いずれにせよ、助かる可能性は低いと思われます」
「そう・・・そうよね」
「それから、これは本題とは関係のない話なのですが、ファーゴ王子はまだ16才で成人していないらしいのです。正妃を娶れないのですよ・・・国王は法律を変えて、成人の年齢を引き下げることを真剣に検討しているみたいです」
(ファーゴ王子は2才も年下だったのね。全然そんな風には見えなかったけれど)
「正妃を娶れば、少しは落ち着くだろうってこと?」
「・・・たぶん、そうでしょうね」
「そんなことは、ないんじゃないかしら。彼には・・・あの子には、真剣に向き合ってくれる人が必要なんだと思うの」
「よく分かりませんが、そうなのかもしれませんね」
オーベル様は、私を見て少し怪訝な表情をしていた。私の顔に何かついているのかしら?
「・・・それと、ジェイドのことなんだけど、会って話すことは出来ないかしら?何だか気になってしまって・・・」
ジェイドは、私に何かを言おうとして魔物に蹴り飛ばされていた。何を言おうとしていたのか、あれから気になって仕方がない。
「そうですね・・・あの、アイリス様、余計な事かもしれませんが、エリオット様に今の話はされないほうがよろしいかと・・・」
「なぜかしら?」
「なぜって・・・他の男性を心配をするような発言や他の男性が気になるという話は、あまり・・・適切ではないと思いますよ。場合によっては・・・見放されてしまうかもしれません」
「えっ・・・」
「まあ、今は両思いになられたばかりなので、大丈夫でしょうけれど」
ついこの間までは、『婚約破棄をどうやったら出来るのか』という事ばかり考えていた。これからは、エリオット様と真剣に向き合っていかなければならないのかもしれない。
「・・・気をつけるわ」
オーベル様は私の顔を見ると、何故か溜め息をついたのだった。
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