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ゲームの続編
「俺の‥‥‥。中条玲太としての記憶を思い出したのは、つい最近なんです」
「‥‥‥」
「えーと、どこから話したらいいのか‥‥‥。俺は司教が捕まって、身の危険を感じたから逃亡したんです。何もやっちゃいないけど、連帯責任とか言われれば、どうしょうもなかったですし‥‥‥。ある日の夜、俺は城をこっそり抜け出しました」
「‥‥‥」
「それから毎日、カルム国内をあてもなく彷徨い歩いていたのですが‥‥‥。ある時、『田舎にでも行ってみようかな』と思いたったんです」
「田舎って、地方都市のことかしら?」
「はい。それで‥‥‥。馬車に乗ったのですが、どういう訳か反対方向に向かう馬車に乗っていたみたいで、着いたらトラスト国の国境付近にいたんです。馬車を降りたら大勢の人がいて‥‥‥人の流れについて行ったら、街に着くだろう!! ぐらいの気持ちで、歩いてたんです‥‥‥。それで、気がついたらトラスト国内にいました。もう、何がなんだか‥‥‥。気がついたら、何故か難民の集まりの中にいました」
「そう‥‥‥。それまで、気がつかなかったの?」
「森を抜けたあたりから、『おかしいな』とは思っていたのですが、人の流れに逆らってまで戻ろうとは思わなくて‥‥‥。行くあてもなかったですし」
「あの難民キャンプで、何をしていたの?」
「前世で料理の勉強をしていた時の知識もありましたし、キャンプ飯の作り方を教えてました。そしたら、皆さん俺のこと重宝してくださって‥‥‥」
なるほど。異世界で自分の居場所を見つけたって訳ね。
「ええと、それでその‥‥‥。トラスト国へ向かう途中、急に前世の記憶を思い出したんです。それからは、ジェイドの記憶と俺の記憶が混ざり合うみたいになって‥‥‥。突如として、あの場所に現れたアイリス様を見たときに、ゲームの内容を思い出したんですよ。『伝えた方がいい』って気がして‥‥‥。色々な事件もありましたし」
「‥‥‥怪しまれるとは、思わなかったの?」
「思ったんですが‥‥‥。これ以上、人が殺されたりするよりはマシだよなって、思ったんです」
私は隣にいるオーベル様を振り向いて見たが、肩をすくめる様な仕草をされただけだった。
「続編では、何かイベントが起こるのかしら?」
「それが‥‥‥。あまり思い出せないんです。ついこの間まで、覚えていた気がしたのですが、冒頭の部分までしかゲームした記憶がないんです。たぶんその頃、転生したんじゃないかと‥‥‥」
そういえば、私もゲームの内容が、なかなか思い出せなかったわね。
「それにしても、ジルが攻略対象に入っているとは‥‥‥」
エリオットの護衛騎士、ジルはサラの想い人であった。
「俺、アイリス様のキャラ設定とエリオット様の見た目が好きだったんです。好きなキャラ同士が結ばれるなんてエモ‥‥‥。えっと、すいません。だから、その、俺が言うのも何なんですけど、婚約おめでとうございます」
「ありがとう。あなたの処遇というか、面倒は、たぶんオーベル様が見てくれると思うわ」
「‥‥‥は?」
「いいでしょう? オーベル様。今の段階では、まだエリオット様に洗いざらい話す訳にはいかないと思うの」
オーベル様は溜め息をつくと、「仕方がないですね」と言って、引き受けてくれたのだった。
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