オルゴール箱

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オルゴール箱

 トラスト国から持って帰ってきてしまったオルゴール箱は、オーベル様に保管してもらおう‥‥‥。と思いながらも、そのまま自分の部屋へ持って来てしまっていた。  箱の底から光が微かに溢れ出ているのが気になり、もう一度蓋を開けようとしたり、魔術を吸収しようとしてみたり‥‥‥。いろいろ試してみたが、蓋が開くことはなかった。 「‥‥‥魔素?」 (オルゴールの箱自体が、魔術具になっているのかしら‥‥‥。対象者以外の人物は開けられないようにしているとか‥‥‥)  私は思いつきで、オルゴールの底を普通に開く方向とは反対側にスライドさせ、出てきた蓋の様な、嵌め込まれている部品を取り除いた‥‥‥。そこには『魔石』が入っており、それを抜き出すとオルゴール箱の蓋は簡単に開いた。箱の中には、トラスト国の紋章入りペンダントが入っている。 「‥‥‥?」  しばらく眺めていると、ペンダントが急に光り出し、驚いた私は座っていた椅子からひっくり返りそうになって、ペンダントをテーブルの上に投げ出してしまった‥‥‥。緑の光は次第に収束し、一方向へ光を放った。 「あそこは‥‥‥。北塔?」  光を放ったその先には、北塔がある。北塔は、見張り台を兼ねた北側にある建物で、三角錐の屋根を持っている。最上階が周囲を見渡せる見張り台となっており、建物の中は螺旋状に階段が伸びていた。登る途中に部屋が幾つかあるのだが‥‥‥。昔、王族の罪人を幽閉するのに使用したことがあると聞いている。  光の指す方角に何かあるのだろうか? そう思いながらも、オルゴールの蓋を閉じ、手元にあるベルを激しく鳴らした。 「お待たせ致しました。アイリス様、いかがなさいましたか?」 「オーベル様を、呼んでくださる?」  自分の声が微かに震えている事に気がつき、怯えている自分自身に驚いたのだった。
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