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報復
北塔の5階にある部屋へ辿り着くと、アリエルは鍵を開け、部屋の中へ入っていった。鎖を引かれて、連れられるように中へ入ると、そこは牢屋にも等しい質素な造りの部屋であった。
部屋の隅にはベッドが置いてあり、ベッドの端にはファーゴ王子が腰掛けていた。両目には白い包帯が巻かれている。
「医者か? やっと医者が来たのか?」
ファーゴ王子の隣には、グレーの修道着を着たアネッサが立っていた。視線が合うと、私に向かって黙礼をしてから、ファーゴ王子の質問に答えていた。
「残念ながら、まだ帰ってきておりません。お忙しいみたいです‥‥‥。その代わりといってはなんですが、今日はアイリス様にお越しいただきました」
アネッサは、部屋に置いてある手枷を一つ拾い上げると、ファーゴ王子の手に掛け、包帯を外すと、左目だけ見えるように巻き直していた。
「なに?! アイリス嬢‥‥‥。なぜここにいる? お前達が、安全な場所に匿ったと言うから、俺はここへ来たんだぞ」
アリエルを見ると、彼女は肩をすくめながら答えていた。
「ファーゴ王子、残念ですが医者が来ることはありません。あなたの右目は、私が消滅させました」
「なに?‥‥‥。騙したのか? 魔眼の手術は成功したと言ってたではないか?!」
「それは、貴方をここへ連れてくるための口実です‥‥‥。貴方には、今ここで消えてもらいます」
アネッサは彼の手を掴むと、床へ突き飛ばした。
「ぶ、無礼者!! 何をする!!」
「ファーゴ王子、ここはトラスト国内の屋敷ではありません。カルム国の城の中にある北塔です。あなたは‥‥‥。トラスト国王に似て、随分と傲慢で女たらしで頭が悪い」
「なっ‥‥‥」
「分かっていないようなので、処刑する前に、罪状を教えてあげましょう。アイリス様には、処刑立会人になってもらいますね」
(処刑立会人?! 何それ?)
そう思ったが、私に拒否権はないみたいだった。
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