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罪状
「トラスト国王は王太子時代に外交でカルム国へ向かう際、私の住んでいた屋敷に泊まっていました。リチャード家は亡きヴァイオレット公爵家の分家で、トラスト国とカルム国の中間地点にあるリチャード家は、泊まるのに都合が良かったのでしょう」
「なっ‥‥‥。お前は、シスターではないのか? 騙したな?」
ファーゴ王子が口を挟むと、アリエルは王子を一瞥してから言った。
「シスターであり、シスターではありません。私は貴方の腹違いの姉弟で、姉にあたります」
あまりの展開に、私は何も言えずに息を呑み込んだ。
「姉? 馬鹿な。俺は一人っ子だぞ?!」
「それは、貴方の父が私の存在を認めなかった所為でしょう。私の母は15才の時、あなたの父親であるトラスト国王に犯されました。けれど子供が出来ても『知らぬ存ぜぬ』の一点張り。本家に泣きついたところ、あろうことかヴァイオレット公爵に事実をもみ消されたのです‥‥‥。母は現実を受けとめられずに、私を産んだあと、自らの意志でこの世を去りました」
「それ、本当の話か? お前の勘違いじゃないのか?」
ファーゴ王子は、父親の所業が受け入れられなかったのか、憤りを感じているようだった。
「当時の執事とメイド長だった人から聞いた話です‥‥‥。間違えるはずがありません。まだ赤ん坊だった私は、そのまま母方の祖父に引き取られ、祖父の子供として育てられました‥‥‥。トラスト国王の血を引いているのは、嫌でも分かります。私も魔眼持ちですから‥‥‥」
「なっ‥‥‥」
「私の右眼は目の前にある物体に対して、空間転移させることが出来る魔眼で、空間を切り取って、別の空間に転移させることが出来ます。それから、左目は目の前にある物体を消滅させることが出来る魔眼です。消したいものを強くイメージすることで、あらゆるものをなかったことにする事が出来ます」
アリエルは笑いながら言っていたが、目は全く笑っていなかった‥‥‥。ファーゴ王子は、流石に恐怖を感じたのか、近づいてくるアリエルを見ると、後ろへ下がっていった。
「えっと、アネッサは‥‥‥」
私がアネッサに尋ねると、彼女は俯きながら答えていた。
「私も、似たような理由で姉を亡くしました‥‥‥。トラスト国王に穢されたのですっ」
「‥‥‥」
「トラスト国王の血を引いた私は、伯爵家での居場所はありませんでした。だから、カルム国の暗部に就職したのです。カルム国の暗部なら、トラスト国の情報も入って来ますし、復讐の機会を伺うのに、ちょうど良かったのです‥‥‥。私は何年もかけてトラスト国王を殺す計画を企てました。そんな時に出会ったのが、アネッサだったのです」
アネッサは一歩前へ進み出ると、私に向かって言った。
「正直言って私は、復讐することでしか自分自身が生きていることの価値を見い出せませんでした‥‥‥。私達は協力しあって、潜入捜査と称してトラスト国やヴァイオレット公爵家を内密に調べていたのです‥‥‥。そんな時です。婚約披露パーティーでアイリス様が、ヴァイオレット公爵を排除したと聞いて、感動と戦慄を覚えました」
(ん? なんだか雲行きが怪しくなってきたわね‥‥‥)
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