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国の存続と滅亡
次の日の朝。鳥の声に目が覚めると、ベッドから起き上がり、窓の外を眺めていた‥‥‥。すると、上空に鷹が飛んでいるのが見えた。
(あれは‥‥‥。リョクリュウ?)
遠くて分からなかったが、アーリヤ国のイル王が使役している使い魔の鷹に見えた。
私は窓を開けて、しばらく眺めていたが、鷹は城の上空を3回ほど旋回したあと、何処かへ飛び去って行った。
「さむっ‥‥‥」
朝の冷気に寒さを感じた私は、窓を閉めるとベルを鳴らした。
「アイリス様、お呼びでしょうか?」
すぐに来てくれたサラに、私はドレスの用意を頼んだ。
「サラ、ごめんなさい。朝食の前に一緒に行って欲しいところがあるの‥‥‥。ついて来てくれる?」
「承知いたしました。どうかなさいましたか?」
「窓からイル王の使役している鷹が見えたの‥‥‥。何だか嫌な予感がするわ。急ぎましょう」
「はい」
サラは私にドレスを着せ、素早くメイクアップしてくれる。
「今日は急ぎでしたので、地を生かしたナチュラルメイクにしております」
「ありがとう、サラ。助かるわ」
*****
とりあえず、いつも会議が行われる大広間へ行ってみることにした私達は、広間へ着くと扉をノックして中へ入った。
大広間には、オーベル様とエリオット様がいて、これから会議が始まるみたいだった。壁際には、数名の騎士が待機している。
「アイリス?! どうしたんだい? こんなに朝早く‥‥‥」
「先ほど窓から、リョクリュウが見えたので、何かあったのかと‥‥‥。なんだか嫌な予感がしまして‥‥‥」
エリオット様は、額に手を当てると溜め息を吐いていた。
「今から、軍会議を開こうかと思っていたところなんだ‥‥‥。実は、トラスト国が滅亡してね」
「滅亡?! 反乱軍は取り抑えられたのでは、なかったのですか?」
「いや‥‥‥。反乱軍は鎮圧された。だが、イル王が黙っていなかったのだ。難民を取り返す為に、国の主力となる兵士や魔術師を殲滅してしまったらしい」
「殲滅‥‥‥」
「かつてアーリヤ国の宮廷魔術士の大半を殲滅したのが、トラスト国の暗部だったことが判明してね。『目には目を。歯には歯を』ということなのかもしれない‥‥‥。イル王からの手紙には『ファーゴ王子を引き渡すように』とだけ、書いてあった」
「まさか‥‥‥。王族を始末することで、片をつけようとしているんですか?」
「さあ、どうだろう‥‥‥。そうかもしれないな‥‥‥」
「エリオット様‥‥‥。それは、あんまりにも‥‥‥」
私は昨日の、仲睦まじそうなジルとファーゴ王子の様子を思い出していた。
「つらいかもしれないが、仕方がない。王族の責務だろう。イル王が記憶のないファーゴ王子を、そのまま処刑するとも思えないしな‥‥‥」
私は零れそうになっていた涙を拭うと、前を向いた。
「そうですね」
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