修道女たち

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修道女たち

『コン、コン、コン───』 「誰だ?」 「国王陛下の使いで参りました。陛下より「至急、執務室へ来るように」との伝言でございます」 「父上か・・・仕方がないな」 ファーゴ王子が扉を開けると、部屋の中へ質素な修道着を着たシスターが2名入って来た。 「あれ?・・・いつものメイドはどうしたんだ?」 「今日は来れないらしく、私どもがアイリス様のお世話をすることになりました」 「そうか・・・よろしく頼む。俺が戻るまでに、キレイにしてやってくれ」 「かしこまりました」 修道女の2人が、ファーゴ王子に揃って頭を下げると、ファーゴ王子は着替えて、足早に部屋を出て行った。 扉が閉まると、2人は私のいるベッドの側へ駆けて来て、縄を(ほど)いてくれる。 「アイリス様!!外に馬を用意してあります。お急ぎください」 「あなた達は・・・」 「アーリヤ国の修道院で働いております、アネッサとリーリャにございます。いつも高額な寄付を頂いておりまして、アイリス様には感謝しております」 そういえば、国境付近にあるアーリヤ国の修道院にも寄付していたかも。あの時は、『逃げ道はいくつあってもいい』って思ってたからなぁ。 「・・・それだけ?それだけで助けに来てくれたの?」 「リン王女に頼まれた経緯もございます。あの方にも、私どもには返しきれない恩がございます。アイリス様にとっては、取るに足らないことだったかもしれませんが、私どもが生きていられるのは、あなた方がいるお陰だと思っております」 そんな大袈裟な・・・と思ったが、彼女達の眼差しは真剣そのものだった。ここから上手く逃げ延びられたら、『後でリン王女にお礼をしなくては』と思った。 「・・・アネッサ様、お急ぎください」 「ええ、そうね。急ぎましょう、アイリス様。早速ですが、こちらにお着替えください」 手渡されたのは、グレーの修道着だった。 ***** 「これで着方は合っているのかしら?」 「大丈夫でございます。さあ、こちらへ」 着替え終わった私達は、テラス窓からバルコニーへ出ていた。 アネッサが、大きな布を広げると転移陣が現れる。 「魔術具の転移陣ね・・・あら?リーリャは?」 転移陣の上に立ったが、彼女の姿が見えない。 「アイリス様。彼女は身代わりの幻影魔術が使えます。暫くはごまかせるかと・・・」 「そんな・・・転移陣があるのなら一緒に帰れるのではありませんか?」 「この陣は、この城の外にある転移陣にしか繋がっておりません。時間を稼ぐ必要があります」 「そんな・・・じゃあ、リーリャはどうなるのよ?」 「心配には及びません。もともと、彼女はカルム国の暗部にいた人間です。この状況を、どうにか切り抜けることが出来るでしょう」 窓越しに彼女を見ると、シルクのガウンに着替えたリーリャが、こちらを見て手を振っていた。 「リーリャ!!」 魔法陣が光ると、いつの間にか、私達は城の外にある木立の中に立っていた。
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