ヒミコの野望

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「あ、アズ⁉︎」  コージーがそれ言っちゃっていいの⁉︎ という顔をして慌てている。  違うの、違うの。頭の中で否定するけど、アズの体はセイシロウの体を抱きしめて離さない。  セイシロウはどんな顔をしているのか、アズは怖くて顔をあげられなかった。  けれどもどうせ「俺も好きだ!(仲間として)」とでも思っているのだろうと考える。セイシロウに限って照れるというカードはない。  自分に暗示をかけると少し気が楽になってきたので、アズはようやく1センチずつ顔をあげてみた。  すると、そこにはアズが見たことのない表情を浮かべた男を見た。 「す……き?」  耳まで赤いセイシロウ。恥ずかしそうに逸らした目がアズの耳の辺りを行ったり来たりしている。  セイシロウが照れている?   「そっか……それは……なんていうか……嬉しい、な」  頭の中のアズが目を回して絶叫した。 (セイシロウに……気持ちが伝わっちゃった──!! しかも、嬉しいって。嬉しいって! どうしよう、私も嬉しいんだけど!)  今すぐ心臓を矢で射抜いて欲しいような気持ちになる。  でもこれはこれで大変なことになった気がする。  どうしたらいいのか、頭がパニックで泣きそうになっていると、押し殺したような笑い声がした。 「くくく……やべえ。面白すぎて声が出た」 「ジオン?」  仲間の注目がジオンに集まった。 「悪い悪い。面白えから黙っていようと思ってたんだけど、堪えきれなかったわ」 「笑い事じゃないよ! 大変だよ〜! アズはこの国の皇女様なんだよっ? それなのにセイシロウなんかと本当に恋人同士になっちゃっていいの⁉︎ 身分違いだし、国交問題が」 「気にすんな。どうせその魔法は24時間で解ける」 「えっ?」  ジオンはニヤリと笑ってアズを見た。 「ヒミコに会って、惚れ薬を飲まされた。そうだろ?」  どうやら最初から気づいていたらしいジオンに泳がされていたと気づき、アズは憤慨しながら頷いた。
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