コージーの申し出

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コージーの申し出

「それでは、約束通り精霊石を私に貸してくれんかの?」  ヒミコは笑顔で手のひらを見せた。  くれ。のポーズだ。  彼女がそう言ってきた時の相談はすでに済ませてある。四人は目を見合わせて頷いた。 「貸しても構いません。ですが、その作業が終わるまで僕たちも見守りたいんです。ヒミコさんの家に僕たちを連れて行ってくれませんか?」  目をキラキラさせて切り出したのはコージーだった。   「大賢者の秘密工房、すっごく興味があります! 僕一人だけでも行きたいくらいです! なんでもお手伝いします! 身の回りのお世話も、下働きでもなんでもします! 僕を弟子にしてください!」  これはコージーたっての希望だった。彼のクリエイターとしての血が騒いで仕方がなかったらしい。  そんなコージーに対するヒミコの反応は、意外なものだった。 「おお! なんて可愛らしい男児なのじゃ! 私の弟子になりたいとな? それはありがたい! ぜひうちに来て手伝ってくれ!」  彼女はコージーの両手を握って大歓迎の意を表した。 「いいんですか?」 「もちろんじゃ。今、ちょうど下働きの者が『こんなブラックな所で働けるかー!』と辞表を叩きつけて出て行ってしまったところでの。不眠不休で三日間、釜の様子を観察するだけの簡単な仕事じゃったのに……何がいけなかったのかのう」 「めちゃくちゃブラックだなおい」  ジオンのツッコミは軽く流された。   「善は急げじゃ! さっそく行くぞ! 全員私につかまるのじゃ!」  ヒミコに促され、四人はそれぞれヒミコの腕や肩につかまった。  次の瞬間、ヒミコの空間転移術により四人は一気にスノーバレル山の頂上付近にあるヒミコの館へ移動していた。  そこはソーディアのコージー家のラボを想起させるガラクタだらけのごちゃごちゃした家だった。 「お主らはさっそく掃除班、料理班、洗濯班に分かれ、私の邪魔をせぬよう心がけよ。この家のルールブックは私じゃ!」  とんでもない場所に来てしまったかもしれない。  コージー以外の三人は同時にそんなことを思った。    
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