「聞いた噂」

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「聞いた噂」

 その人はやっぱり、携帯に書いてあった通りだった。  毎日のように学校終わりに、女の子を取っ替え引っ替えしていた。女の子に甘い言葉を投げかけては、次の日には、また別の女の子に甘い言葉を囁いていた。  さぞ楽しかっただろう、何人もの恋心を弄んで。私も好きだったのに、なんで?  「ゆるさない」  私は、「ーー君は女の子を誑かして遊んでいる」という噂を流した。「聞いた噂なんだけど」という言葉を添えて。  その噂は、瞬く間に拡がっていった。学校のどこにいても、その噂で持ち切りだった。  その噂がとうとう本人の耳にも入り、彼は学校に来なくなってしまった。    彼が悪いんだ、私は悪くない。これは、女の子たちの恋心を踏み潰した罰だ。自業自得だ。  誰にも気づかれないように嘲笑った。                 *  彼が学校に来なくなって数日経った頃、また、あの携帯の通知が鳴った。  「別のクラスのーー君は、彼女が3人いる」と書かれていた。  携帯に書いてあることは、またしても本当のことだった。  たまたまーー君の予定帳を拾い、書いてある内容を見てしまった。「~日にAちゃんとデート、~日にBちゃんとデート、~日にCちゃんとデート」と書いてあった。  このことを付き合っている女の子達は知っているのだろうか。こんな遊び人と付き合ってちゃ可哀想だ。  「ゆるさない」  私はまた噂を流した。「聞いた噂なんだけど」という言葉を忘れず。  この噂も瞬く間に拡がっていった。  噂を耳にした付き合っていた女の子達は、ーー君に問い詰めていた。女の子達はーー君を責めて、責めて、責めた。その女の子達の友達も新たに加わり責め続けた。  そして、彼は学校に来なくなった。  自業自得だ。  また、誰にも気づかれないように嘲笑った。                 *  また、携帯の通知が鳴った。  「ーーさんは、事実よりも盛って話をしている」「ーーさんは、何人もの男の子達を騙している」今度はあの人、次はその人。次々と携帯が鳴る。
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