01.軽い言葉、よりも軽い命。

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事態が変わったのは、その三時間後だった。 プッシュ通知がうるさくて、仕方なくスマホのトーク画面を開いたのだ。 『おいマジかよ』 『ニュースになってるよ』 トークの流れが速すぎて、目で追うのが大変な有様だった。 「恵美、大変よ!」 呆然としてスマホの画面を眺めていると、階段を駆け上る音と母が呼ぶ声が聞こえた。 「恵美!」 ノックもせずに母は包丁を握ったまま私の部屋を開けた。 「二年生の時の先生が殺されちゃったって!」 私はリビングに降りて、ローカルニュースを眺めた。 卒業アルバムからのトリミングだろうか、担任の粗い顔写真と名前・年齢のテロップ。 「あら嫌だ、タマネギ焦げちゃったわ」 既に母の中での優先順位は、元担任の死より晩ご飯に移っていた。 先生の死は偶然だろうか、それともユーリが手を下したのだろうか。
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