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「てゆうかさ。その笑顔、本当ムカつく!なんでずっと笑ってられんの?ムカつかない訳?恵子にも絵梨子にもアタシにも」
美咲が何を言っているのか、私にはよく分からない。
──ただ、私の心には何も響かない。
だからつい意味もなく笑ってしまうのだ。
美咲が心配してくれることが嬉しくて、友達の少ない私が友達の多い美咲と一緒にカフェに行けることがワクワクして楽しくて、私が怪我をしたり嫌がらせされる度に怒ってくれる美咲に嬉しくて涙が出そうになってくる。
「心配してくれてありがとうね、美咲」
にこりと微笑むと美咲は、怖い顔をしながら、席を立ちカフェから出て行った。
「はぁ……」
私はまた美咲を不愉快にさせてしまったようだ。
私は他人から見たら、欲しがるモノ全てを持っているという自負がある。でも嫉妬もやっかみも逆恨みも全く気にならない。
それはきっとたった一つだけ、私には無いモノがあるから。どんなに経験してみたくても、欲しくても手にできないもの。
──それは『怒りの感情』
自分が初めて『持ってない』と、気づいたのは、高校の時だった。
同じ学校の様々な学年の男の子達から、毎日の様に告白をされ門の前には他校の男子生徒が、私を目当てに群がる。
快く思わない一部の女子達から、私はある日、トイレに閉じ込められて暴言を吐かれた。
数えきれないほどの暴言を吐かれたのに、戸惑っているのは彼女達の方だった。
「なんなの?」
彼女達は私の顔が気に入らなかったらしく、更にバケツで水をかけられた。
その時何故だか私は可笑しくなってしまったのだ。
「な……何笑ってるの?」
主犯格の女が笑みを浮かべた私をみて、思わず後ろに下がった。
何故?そんなこと分からない。ただ可笑しくて堪らなかった。
そして、目の前の女は私を睨みつけると腕を振り上げる。
乾いた音と共に左頬に痛みが突き刺さった。
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