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「これでも、まだ笑う?」
勝ち誇ったような女の顔がまた滑稽で、私は今度こそ大きな声で笑っていた。
それ以来嫌がらせは少しずつ減っていった。『怒』の感情がない私に相手が最後は、気味悪がって遠ざかっていくのだ。
私はきっと、『喜怒哀楽』の『喜』と『楽』の割合が多くて、『哀』は、感動や、深い悲しみ等にのみ表れるから割合が他の人より少ないんだろう。だから他人からの暴力や嫉妬に関して、哀しく感じることはない。
愛犬が亡くなった時は心から哀しくて涙が止まらなかったし、あとは感動する映画を見たり、本を読んだ時、涙が出るほど心が揺すぶられる。
そんな私にもささやかな悩みはある。それは交際が長く続かないこと。
実際、男の人からの誘いは絶えず見た目と親のスペックで幾人かと交際した。でもどの相手とも長続きはしなかった。
『お人形と付き合ってるみたい』
それがお決まりの別れ台詞だった。
「お人形みたい……か」
いつも笑っているからだろう。
誰にも聞かれないはずの言葉は、すぐに拾われる。
「お人形みたい?誰に言われたの?」
見上げれば、私服に着替えた古谷が私を見下ろしていた。
「あ、あの……」
「此処いい?」
思わず頷いた私に微笑みながら、古谷が腰を下ろした。手に持っていたここのカフェの新作のピーチスムージーをテーブルにコトンとおく。
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