感情

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※※※ 「ねぇ、あのカフェ店員と花音って付き合ってんの?」 哲学の講義を広い教室の一番後ろで聞きながら、両瞼を腫らした美咲が小声で私に聞いた。 「うん、この大学の四回生だって」 「友達から聞いたけどさ。そのイケメンちょっと変わってるらしいよ?何?変な趣味とかあんの?」 私は黒板に書かれたニーチェの『忘却は、よりよき前進を生む』という言葉についての解説をノートに書き留めながら英太の事を考えた。 「変わってる……?」 カフェで出会ってから、水族館、ドライブ、とデートを重ねて3回目のデートで泣けるラブストーリーの映画を観た後、イタリアンレストランで食事をした。その帰りに英太から告白された。 「すごく優しいし、特に気になることはないけど?」 「ふぅん。単なる、やっかみからの噂かな」 美咲が切れたシャーペンの芯をカチカチと出しながら、面倒臭そうにニーチェの解説を雑な筆跡で写していく。 「ね、ところでもう彼とシタ?性癖やばいとか?」 唇を持ち上げて愉快そうに美咲が私を覗き込んだ。
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