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衣茉は大きめのカバンに突っ込んであるA4サイズの茶封筒を取り出した。
ちなみにこの黒い革のカバンは、いかにも出来る女風のカバンだ、と思って買ったものだが。
今のところ、なにも出来る女になってはいない。
経理なのに電卓が苦手で、時折不安になって、そろばんで計算し直したりする出来損ないの女、衣茉は、茶封筒の中からプロットの束を引っ張り出す。
一応、何個か恋愛ものを書いてみたのだ。
印刷して読み直すと、パソコンの画面上とは違う雰囲気なので。
考えがまとまったり、新しいアイディアが浮かんだり。
うっかりしてる部分に気づいたりする。
よし、今日こそ、これを夜景の見えるカフェでお茶を飲みながら、読み返してみよう。
そう思い、会社まで持ってきたのだ。
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