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『カフェでプロットを読み直す』もロクでもないことになって終わりそうな気がする……。
ふう、と溜息をついて、衣茉が茶封筒をカバンに戻そうとしたとき、バサリとプロットの束が床に落ちた。
おっと、と床に散らばったプロットを拾おうとした瞬間、ガチャリと扉が開く音がした。
ぎゃーっ。
何故、今、ロッカールームにっ!
仕事中ですよっ?
と、いや、お前もな、と言われそうなことを思いながら、衣茉は慌ててプロットをかき集める。
コツコツと近づく靴音を聞きながら、衣茉は、
このドキドキ、やばいっ。
なんかサスペンスを書きたくなってきたっ、などと考えていた。
あっ。
あんな遠くに、文豪の雰囲気に浸ろうなんて思って、途中まで万年筆で書いた原稿用紙が落ちてるっ。
ロッカーの向こうにいる誰かが足を止めたようだった。
原稿用紙を拾う大きな手が見える。
男の人のようだ。
読まないでください、読まないでください、読まないでください~っ、
と念仏のように唱えながら、衣茉はその原稿用紙に、なにを書いたんだったか思い出そうとしたが、動転しているので思い出せない。
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