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そもそも、いい大人が原稿用紙持ち歩いてることからおかしいし……。
あっ、そうだっ。
弟の読書感想文を手伝ってるんです、って言ってみるとかっ?
いや、うちの弟、大学生だしっ。
私より勉強できるしっ。
そもそも、夏休み、もう終わってるしっ!
カフェに行く前からロクでもないことになり、プロットを持ってきたことを後悔したとき、その原稿用紙を手に八尋が現れた。
よりにもよって~っ、と衝撃を受けながらも、衣茉は、なんとか取り繕おうとする。
「あ、あ、ありがとうございますっ。
すみませんっ。
あの、それ、実は……
弟に書いてもらった読書感想文なんです……」
いや、お前はそれを何処に提出する気なんだと言われそうな言い訳をしてしまう。
実際、昔、弟に下書きしてもらったことがあったからだ。
ああ。
こういうときに、人はおのれの悪事をポロッとしゃべってしまうのだな、と思ったあとで、
これ、使えそうだからメモしよう、
と反射的に思ってしまった衣茉の手に、原稿用紙を渡しながら、八尋が言った。
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