バレました……

19/86
前へ
/418ページ
次へ
   ……読まれたのが私より妙なことを言い出す人でよかった。  いや、よくないっ、と改めて衣茉は思う。  渡そうとする体勢で原稿用紙をつかんだまま、八尋が衣茉を見つめて言う。 「お前は、私と恋してくれませんか、と言っていたが」  く、繰り返さないでくださいっ。  そして、原稿用紙から手を離してくださいっ。  一応、衣茉に向かい、差し出してくれているのだが、衣茉がつかんでも八尋は原稿用紙を離さない。  これ、なに書いてたっけ、とチラチラ見ようとする衣茉の頭の上から八尋が言う。 「要は、恋人募集中ということだな。  実は俺も募集している」 「えっ? 課長がですかっ?」  そんなキャラには見えないのですかっ。  っていうか、勝手に恋人希望の方が寄ってきそうなんですけどっ。
/418ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2282人が本棚に入れています
本棚に追加