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夫は持ち帰り残業で、午後11時過ぎまで根を詰めて仕事をしていた。
「よし、今日はここまででいい。寝るぞ」
夫より先に寝ては悪いな、と待っていた妻は夫が飛びこんだベッドに自分も入りこんだ。
「疲れてるみたい」
「そりゃ、疲れたよ」
応える夫に妻は抱きついた。頭をこすりつけて優しく労わる。しかし、夫はもう悟っていた。
「ほらほら。今のでたまさんが元気になったぞ」
「元気になった?」
妻はよろこぶ。
「俺は元気じゃないけど、そこだけ俺の意思と別に元気になるんだ」
「えっ」
妻は驚く。
「ほんとに、息子みたいね」
妻はやさしくつんつんしてあげた。
「あー、また元気になったじゃないか」
「たまさんが元気だと、私もうれしい」
夫は複雑な想いだった。眠くて仕方がないのに。
フリー画像:Unsplashより。
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