タコさんウインナーの悲劇

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 翌日、お弁当作りに励んだ。タコさんウインナーに激辛で有名なハバネロをかけた。見た目は昨日のタコさんウインナーと同じになるようにした。  お昼休みになると、柳原君が昨日のように来た。私はその展開を待ってましたとばかりにお弁当箱を開けて差し出した。  しかし、予想に反して柳原君の箸は卵焼きに伸びた。私はそのことに愕然とした。私が立てた完璧な計画が水泡に帰した。柳原君はおいしそうに私の卵焼きを食べていた。 「柳原君、なんでタコさんウインナーを食べなかったの?」 「だってウインナーにハバネロ入っているだろ。匂いでわかったから」  ああっ、しまった。匂いは全然気にしてなかった。ウインナーに近づいて匂うと確かにハバネロ特有の匂いがした。迂闊だった。  私はハバネロが入っているとはいえ、食べ物を残すのは悪いと思って清水の舞台から飛び降りるつもりでウインナーを口の中に入れた。辛い。辛いというより痛い。炎を飲み込んだように熱い。  柳原君が私の卵焼きの代わりに自分の卵焼きを渡してくれた。昨日も食べた卵焼きに特に期待はしてなかったけど、口の中が痛くて食べた。  すると痛みが卵によって癒されるのを感じた。それでも痛い、けれどおいしい。昨日食べた卵焼きよりもさらにおいしい。痛みが引いてきて喋れるようになった。 「柳原君、昨日も今日もおいしい卵焼きだね。お母さんが作っているの?」  柳原君が照れながら頬を上げて喜んでいた。 「俺は将来シェフになりたくて勉強しているんだ。弁当は全部、俺が作ってる」 「自分で作っているんだね。偉いね」  私は柳原君に尊敬の気持ちを抱いたけど、仕返しをしてやる気持ちが消えることはなかった。
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