願い

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「数日前、僕宛に封筒が届いてたんだ。宛名は書いてなかったけれど、中身はUSBが一つ。綺麗な男性の文字で一人の時に見るようにと手紙が添えられていたから、夜中にこっそり再生してみたんだ」 「…………」 瀬名の言葉に、理人は思わず頭を抱えた。 あの日、あの部屋で動画撮影が出来た人物と言えば、一人しかいない。 絶対に撮影はするなと念を押していた筈だが、やはり一部始終が撮影されていたのか。 幸か不幸かその動画が理人の身の潔白を証明するきっかけになったようだがどうにも複雑な心境だった。 「姉さんがちょうどお風呂に入っていてくれて助かったよ。僕宛の郵便物、全部姉さんが持ってるって父さん達から聞いたよ? それに、理人さんは僕に会うために家まで来てくれていたそうじゃないか。おかしいと思ってはいたけど、嘘を吐いてまで引き離そうとするなんて酷いじゃないか」 「わ、私は……秀一の為を想って……」 「僕の為?」 「えぇ、そうよ。秀一には普通の家庭を築いて欲しいの。一時的な感情に流されて将来を棒に振るような真似をして欲しくない」 さも当たり前と言わんばかりの真奈美の態度に理人は思わず眉根を寄せる。瀬名に幸せになって欲しいと願う気持ちはわかる。だけど、それで瀬名本人の意思を無視して良いはずが無い。 それに、彼の話が本当だとするならば、自分が門前払いを食らっていたのも瀬名が会いたくなくて姉に頼んで拒絶させていたわけでは無く、彼女の独断と偏見によるものだったという事になる。
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