act.15 平穏に潜む

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「そう、ですか……。そんな事が……」 暫くして目覚めた瀬名は、随分とスッキリとした顔をしていた。寝ている時にあった出来事を話すと彼はとても辛そうに眉根を寄せて俯いた。流石に、一連の蓮とのやり取りを話すことは出来ずに、伏せておいたが。 結局、あの後すぐに真紀はパトカーに乗せられ、そのまま連行されてしまったらしい。 車上荒らしを働いた上に刃物を振り回して暴れたということで、彼女は警察で事情聴取を受ける事になったようだ。恐らくクスリの常習者でもあるらしいから塀の中から出て来るのはいつになるかわからない。 あの時の会話から察するに、蓮は事前にあの女と接触していた可能性が高い。 私服警察官も何故あの時間帯に駐車場を巡回していたのか。もしかしたらそれすらも蓮の仕業かもしれない。でなければ、あんなにもタイミングよく自分たちが居る前で彼女が捕まる。なんて事あるはずが無いのだ。 まさか、ないとは思うがナオミ達もグルなんだろうか? いや、ナオミは違うにしても山田は可能性がある。アイツは高校時代から蓮の下僕だったし最も近い所に居た男だ。 という事は、この花見も、ナオミと山田が付き合いだしたのも全て蓮の罠? 何処までが嘘で真実なのか、さっぱりわからない。 もし仮にそうだとするならば、自分たちは蓮の手の中でずっと踊らされていたという事になる。一体どこまでが計算ずくだったのだろうか。 考えれば考える程、彼が怖くなる。 蓮が本気で自分を手に入れようとしているのは明白で、その為には手段を択ばない。そんな狂気すら感じる現状に眩暈を覚える。
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