帰省(瀬名SIDE)

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「秀一はきっと騙されてるのよ」 真奈美を新宿方面にあるホテルまで送っていく途中、不意に彼女はそう呟いた。そう言うだろうとは思っていたが、彼女の反応は想像以上に激しいものだった。 「そんなことないよ。理人さんに限ってそんな事」 「絶対にないって言いきれるの?」 「それは……」 言い返そうと口を開こうとするものの、即答は出来なかった。 理人は決して嘘をつく人間ではない。けれど、彼は時々何を考えているのかわからない時があるのも事実だ。 特に最近は理人の中で何か変化があったのか、少し様子がおかしい時がある。だから、彼の全てを100%信じているかと言われれば少し違うのかもしれない。 でも、理人は自分を裏切ったりしないと、彼を信じたい気持ちの方が強かった。 「……理人さんの事を悪く言うのなら、いくら姉さんでも許さないよ?」 「……っ。私だって、そんなこと言いたくないわよ。でも……貴方はまだ若いし、心配なの。得体のしれないオジサンに引っ掛かるなんて絶対何か裏があるはずだわ……」 「会ったことも無いのに、憶測でものを言うのは――」 ホテルに辿り着き、エントランスに差し掛かったその時、蓮と連れ立ってホテルのチェックアウトを済ませたばかりの理人とばったりと出くわした。 向こうもまさかこんな所で出会うとは思っていなかったようで、驚いたように目を丸くして固まっている。
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