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「おい、てめぇ」
「な、なによ!」
ドスの利いた声で凄まれて、真奈美がたじろぐ。
「瀬名の為、なんて都合のいい言い訳付けて理想の弟像を押し付けてるんじゃねぇよ」
「……っ!!」
彼女の言動を聞いていると、まるで自分の両親と話をしているような気分になって来る。弟の為だと言いながら、結局は瀬名の話に耳を傾けてはいない。
「そんなの瀬名に失礼だろうが。瀬名は瀬名なんだ。他の誰でも無い。お前が勝手に作り上げた瀬名の虚像と本物を一緒にすんなよ」
瀬名の姉の顔がみるみると歪む。今にも泣き出しそうな顔で、震える唇で何かを言いかけたが、結局何も言えずに唇を引き結んだ。
「……姉さん。僕が混乱していた時にずっと側に居てくれたことは感謝してる。……昔もよく、家に居たくなくて怖くて逃げだした僕を迎えに来てくれてたよね。でももう、あの頃の僕じゃないんだ。自分の幸せは自分で決めたいんだよ。僕が今一番幸せを感じられるのは、この人と一緒に居る時だから……」
グッと肩を抱かれて引き寄せられ、理人は頬が熱くなるのを感じた。
瀬名が愛しそうに真っすぐ自分を見ている。
恥ずかしいけれど、それが堪らなく嬉しくて躊躇いがちにそっと瀬名の背に腕を回した。
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