4.

2/4
前へ
/15ページ
次へ
 魔王討伐に巻き込んだこと。魔王を倒してしまったこと。人間がひどい乱暴をしたこと。2年もひとりで彷徨わせたこと。知らないふりをしたこと。  全部まとめて謝ると、ポメロはぎゅっと目を閉じて、首を横にプルプル振った。 「レインは悪くないわ」  勝手に召喚された上に役立たず呼ばわりで放り出され、魔王を倒せばお役御免で殺されて。考えてみれば、社畜で終わった前世よりも、異世界の方がずっと理不尽でひどい人生だった。  唯一無二の相棒に、出会ったこと以外は。 「ポメロ、こっちの世界に残りなよ」 「え?」 「向こうに還らなきゃいけない理由なんてないだろ? うちで一緒に暮らせるように、両親に頼んでみるからさ」  翔平は──レインは言わなかった。おそらくポメロにはもう、向こうの世界に戻るすべがないことを。泉を通って日本にしたのではなく、自分と同様、記憶を残したままこちらの世界にしたのだろうことを。  初めて森で会ったとき、ポメロは群れからはぐれて泣いていて、小犬のようだった。実家で飼っていたポメラニアンを懐かしんで「ポメ郎」と名付けたあのときには、まさかその子がポメラニアンに生まれ変わるなんて、考えてもいなかったけれど。 「僕、もう魔法は使えないけどさ。人生も二回目ならまぁ、うまくやれるし」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加