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「すごい魔法の使い手だったのに、いつも謙虚で、優しくて。人家に上がり込んで棚から薬草や金貨を奪っていくようなニセ勇者とは違う、レインは本物の勇者だったわ」
「それは……」
片っ端から箪笥や壺を『調べる』して回らないと話が進まないゲームも多いのだ。ニセ呼ばわりされた歴代の勇者にも、同情の余地はある。
「レインって、勇者なのに魔法使いだったんだ?」
剣と盾を装備した猛者。一般的に、勇者といえばそういうイメージだろう。初めて質問した翔平に、ポメロは嬉しそうに尻尾を振った。
「レインはね、剣も弓も、攻撃魔法も使わない新勇者だったわ。そのかわり、自分が選んだ対象を強化する魔法が使えたの」
「はぁ」
「でも、強化された人には、レインのおかげだという自覚がなくてね。召喚した神官にも能力を認めてもらえず、冒険者のパーティーからも追い出されちゃったらしいわ」
「それで、役立たずを追放したパーティーはその後、雑魚モンスター相手に全滅した、と」
「あら、どうして分かるの?」
「いや、まぁ……なんとなく。それで?」
「レインはそんなとき森でアタシと出会って、アタシを世界一強い魔獣にしてくれたわけ」
「へえ」
「命懸けの旅だったけど、楽しかったわ。呪われた洞窟、天空の塔、竜の棲家……アタシたちふたりで、最後には魔王を倒したの」
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