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「レイン! 見ーつけた!!」  頭上からの甲高い声に、翔平は反射的に空を仰いだ。  青空に……ムササビ?  急接近する毛玉を認識した瞬間、視界が薄茶色で覆われた。 「わぶ……っ」  顔に受けた衝撃に、たまらず尻餅をつく。ランドセルが彼の背中で、ガチャンと鳴った。 「なんだよこれぇ?」  顔に貼り付いた物体を、両手で引き剥がす。  ミルクティー色の柔らかい毛に覆われた、小さな体躯。ジタバタ揺れる短い四肢。真っ黒な二つの目が、翔平の鼻先15センチで爛々と輝いている。  落ちてきたのは、ポメラニアンだった。 「やっと見つけたわ、レイン! もう逃がさない……あれ?」  ポメラニアンは動きを止め、翔平の全身にサッと視線を巡らせてから呟いた。 「え? 誰?」 「いやそれこっちの台詞」 「だって、レインの気配が……」  温かな胴体を支える翔平の手に、小さな鼻口(マズル)が近づいてクンクン鳴った。 「違う……?」  その声には、明らかに落胆が滲んでいる。翔平はポメラニアンをアスファルトの地面に下ろし、耳元で囁いた。 「なんだか知らないけど、人語が話せる犬なんて、悪い人に捕まったら大変だよ?」 「まぁ! 犬なんて失礼な! アタシにはポメロって立派な名前があります!」 「ポメ郎……?」 「ポ、メ、ロ、よ! レインがつけてくれた名前なんだから!」 「……へぇ」  気を遣って声を落としたのがバカらしくなるほど、ポメロはキャンキャン喚いている。
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