傷心の私を男友達が誘惑する

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連日の猛暑が世間を騒がせる八月初めの土曜日。 仕事が休みなのをいいことにエアコンで心地よく冷やされた部屋で二度寝して、気が付いたらカーテンの向こうから差し込む光が眩しくなっていた。 寝転んだまま枕元で充電していたスマホを取り上げる。通知が一件。 『エアコン壊れた』 これ以上ないほど簡潔なメッセージは、大学に通っていた時期にほんの少しだけ所属していたサークルで出会った男友達の啓斗からだった。 「あらまあ」 気の毒に。どこか他人事な感想を抱きながらファイト、という吹き出しと共に小さなうさぎが跳ねるスタンプを返す。すると即座にスマホが振動した。 『今から紗矢んちいくわ』 『なんで?』 啓斗の誘いは唐突なことが珍しくない。今から飲も、とか営業で私の家の近くに来たから夕飯一緒に食べよう、とか。 呼び出しに応じると奢ってくれるので、都合のつく八割くらいで了承してきたけれど、休日の朝に自宅に突撃するなんてさすがに冗談なはずだ。 前日の深酒の名残りで頭がぼんやりするし、きっと顔もむくんでいる。だるくて人と会うような気分じゃない。 冗談であってくれと願いながらシーツに後頭部を着地させた途端、軽快な着信音が鳴った。
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