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啓斗がシャワーを浴びている間、差し入れの中身を確認する。
まずはケーキの箱をを冷蔵庫に入れて、次に総菜の袋を開けた。サラダ二種類、ベトナム風生春巻き、キッシュ、それにタルタルソースの添えられたエビフライ。すべてデパ地下で人気の総菜屋のものだ。
「美味しそー……」
起きた時は胃が重くて全然食べる気がしなかったのに、鼻先をくすぐる香ばしい匂いで急に空腹を思い出す。
きゅうきゅうと切なく縮む胃を手のひらで押さえつけた時、背後のドアが開く音がした。
振り返るとグレーのスウェットにTシャツを合わせた啓斗が立っている。
「差し入れ気に入った?」
一人暮らしではなかなか食べる機会のない高級総菜にケーキを出されてしまえば素直になるしかない
「うん。早く食べたい」
「だろ? ちゃんと好物買ってきたからな」
言われてみれば生春巻きとフライにはエビが使われているし、キッシュもサラダもサーモン入りだし、と私の好きなものばかりだ。
「ありがとう。普通に嬉しい」
「じゃあ熱烈に歓迎して?」
にんまりとしながら言う啓斗に笑みが引き攣る。こちらに両腕を差し出してくるのはハグでもねだっているのだろうか。せっかくじんわりしたのに台無しだ。
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