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エイプリルフール
*
「好きだ。ずっと前から」
そう言うと、君は一瞬驚いた顔をした。
それからちょっと戸惑って。
その後で、あぁそうかと苦笑いした。
「冗談止めろよ。本気にしちゃうだろ?」
びっくりしたと背中を向けて歩き出す君。
今日はエイプリルフール。
君が愛の告白を嘘だと思うのも無理ない。
何度も一緒に歩いた歩道橋の上。
西陽が照らすこの時間。
「バレた?」
「当たり前だろ?エイプリルフールに告白詐欺すんなっつーの」
ハァと大きく溜息を1つ。
丁度真ん中の手すりにもたれ、項垂れる君。
「やってらんない。こっちはお前のこともうずっと前から好きだっつーのに」
ネクタイを緩めて頭をかく君の隣で、同じようにネクタイを緩めてもたれる。
「止めてくんない?人の気持ち弄ぶの」
「弄んでなんか」
「弄んでる。かき乱して楽しい?」
ならばと、頬杖をつき恨めしそうに前を向く君にもう一度。
「好きじゃない。ここ最近」
息を呑む君。
――愛しい君だけにつく、甘美な嘘の日。
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