かき氷

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かき氷

 *  階段を上った先にあったのは  行き慣れた雑貨屋さんじゃなくて  かき氷屋さんだった  君とぼくは少しだけガッカリして  店頭脇の椅子に目をやる  かき氷のMENUと手書きのPOP  「桃と練乳だって」  「ほんとだ。ふわふわそう」  君の目がキラキラ☆  「せっかくだから入ろう」  君の誘い文句に頷く  「涼んでって下さいね」  女の人の心地よい接客に  奥で物静かにかき氷を作る男の人  ガリガリと氷が削られていく音  2階の窓辺でチリンチリンと鳴る風鈴  入道雲を突っ切る飛行機雲の線  「なぁ、あの入道雲わた菓子みたいだ」  「あなたは本当に食べることばかりね」  君が笑う  「お待たせしました」  思ったよりも大きな器に盛られたかき氷  一口目を口に入れると  ひんやりして甘いシャリシャリが  喉元と心を(くすぐ)る  「「美味しい」」  スプーンを口にくわえたまま  君と微笑み合う  神様からすれば  なんてことない日常の一コマなんだろうけど  ぼくは君とこうして過ごす  何気ない日常が  たまらなく愛おしいんだ  
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