花火

1/1
前へ
/38ページ
次へ

花火

 *  大輪の花が夜空に浮かび上がる  「綺麗だね」  呟く君を見上げながら  永遠に時間が止まればいいのにと願う  「どうした?」  君が不思議そうに覗きこむ  「うぅん、何でも」  伝えたいことが沢山ある  君が誰より好きなこと  今日が終われば君に会えない  神様から貰った最期の時間が愛おしい  花火が終われば終わりを迎える  魔法が(ほど)けてしまうから    「花火見られて良かった」  「おー」  「約束、守ってくれてありがとう」  七夕に花火  きっと織姫も彦星も驚いてる  クスッと笑うと君も微笑んだ  「浴衣……可愛い」  普段なら言わない台詞  「ありがとう」  そう言って  小学生以来ぶりに幼なじみの手を握る  鳴り止まない花火の音の中  ピクンと動いた君の指先  その少し汗ばんだ手の温もりを感じながら  夜空を見上げる  「……好き」  ずっと大好きだよ  終焉とばかりに  最後を告げる花火が夜空を彩る  轟音できっと届くことのない想いを抱え  わたしの魂は、花火と共に舞い上がる  ――忘れないで  「…………サキ?」  
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加