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5分ほど審判団が話し合った結果、主審から次のような説明が会場全体に対してなされた。
「このアンドロイドは、製造年月日から16年が経過しています。したがって、大会規定には抵触しません」
圭介はその説明を聞いて、不自然さを感じた。彼の見る限り、マシュマロウはどう見ても16年前のモデルではない。『最新式』としか思えないのである。
「まだ私と戦いますか?」と、マシュマロウ。
「……私たちに勝ち目はないわ。降参しましょう、フランツ」
ビアンカの言う通り、催眠術の通じないアンドロイドに肉弾戦を挑むのは、自殺行為である。
「し、しかし……」
フランツは何か反論しようと思ったが、第三の能力のない彼には何もできない。ビアンカの催眠術が封じられれば、もうなすすべがないのだ。二人は降参し、試合はアンドレスたちの勝利となった。
「マシュマロウ、あなた……私の『秘密』に気付いているでしょう? なぜそれを言わないの?」
立ち去ろうとするマシュマロウを、ビアンカが呼び止めた。
「私は『機械』ですが……一応女性の気持ちはわかりますので」
マシュマロウはそう言って、フランツに向かって微笑んだ。もちろん、そこには皮肉が込められているのだ。フランツは、悪気がなかったとはいえ、無意識にアンドロイドを差別していた自分を恥ずかしく思った。
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