コロナの目的

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 渋木は既に天丼を食べ終わった。昨日、体脂肪率が20%を超えている事実が発覚したので、いつもなら『大』を頼むところを、今日は我慢して『中』にしたのだ。 「地球にとって、人間が癌細胞みたいな存在だとしたら、コロナは何だ?」 「ん? ああ、そうか。コロナは免疫細胞なのか? じゃあ、俺たち人間の方が悪者なのかよ?」  渋木は急に田沼の話に興味を示した。彼は熱しやすく、冷めやすい。女の子にもてるために英語をペラペラと話せるようになりたいが、そのために始めたTOEICの勉強も、長続きしていない。 「まあ聞けよ。俺も初めはそう思ったんだ。人間が増えすぎて……しかも地球や他の動植物に対して悪さしかしないもんだから、地球がコロナを使って、俺たちを絶滅させようとしているのかと思ったりもしたんだ」 「なるほど……それは興味深い話だな。じゃあ、俺たち人類は、このまま絶滅するのか?」 「違うんだよ、渋木。もしコロナが人間を絶滅させるつもりなら、もうとっくにやってるはずだ。昔、そういう映画もあった」 「ん? ということは? コロナの目的は一体何なんだ? てか、そもそもウイルスに『意志』なんてあるのか? あんなの、たんぱく質の殻の中に遺伝子が入ってるだけじゃなかったっけ?」 「まあ、そんなところだよ。そこで肝心のコロナの目的なんだが……」  田沼の話を遮るように、学食にアナウンスが流れる。『食事は15分以内でお願いいたします』 「……コロナの目的なんだが、もし人類を絶滅させるつもりなら、さっさと変異して強毒化すればいいだけの話だろ? なんでコロナはそうしない? 中国で確認されてから、一年九か月……確かそれくらいだったと思う……しか経っていないのに、コロナは既に12回も変異してるんだ。強毒化するチャンスはいくらでもあったはずだろ?」
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