キミの初めてを僕にください。

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キミの初めてを僕にください。

きっと生まれた時の星回りで その後の人生が決まっているんだ。 高校に入学した時、 佐橋雄大に出逢って、そう痛感した。 かわいい顔立ちに、愛嬌のある性格。 最近まで彼女が途切れたことがなく、 初体験を中3で済ませている佐橋は、 異文化に生きる男だった。 僕、岸野葵は6月で21歳になったが、 彼女がいたことがなく、童貞を更新中。 友達はそこそこいても、 奥手で消極的な性格が災いして、 一生恋愛なんて縁がないと思っていた。 しかし夏になり、 意外な展開が僕を待っていた。 「誕生日おめでとう」 佐橋と知り合って初めて、 誕生日当日にお祝いをすることになった。 今まで誕生日を歴代の彼女と過ごしていた 佐橋が、親友の僕と夜を過ごしたいと 連絡してきたのは、一昨日のこと。 8月2日はたまたまバイトがなかったので、 大学の講義が終わってすぐにケーキを買って 一人暮らしをしている佐橋の家に向かった。 「来たよ。これ、ケーキ」 「ありがとう」 月に1度は足を踏み入れるその部屋は、 几帳面の佐橋らしくいつも整頓されている。 手洗いを済ませた僕は、 アイスコーヒー用の氷をグラスに入れながら 佐橋に微笑みかけた。 「佐橋から連絡があって、嬉しかったよ。 夜はピザでもとる?」 佐橋の前では、 いつも気負わずに話せると自覚していた。 しかし、佐橋が突然僕の手を握り、 いつになく真剣な表情で、 「岸野、大切な話があるんだ」 と囁いてきたら、動揺するに決まっている。 テーブルを挟んで、佐橋と向かい合った。 「どうしたの。顔、怖いよ」 ぎこちなく微笑み、佐橋の言葉を待つと、 アイスコーヒーを一口飲んだ佐橋は、 「誕生日にずっと、欲しかったモノがある。 僕の希望を叶えてくれるか?岸野」 と、まっすぐ僕を見つめて言った。 「欲しかったモノ?」 「うん」 「まあ、モノによるけど。何?」 「キミの初めてを僕にください」 「は?」 「お願いします」 「いや、初めてって、何の」 言葉の意味がわからず聞き返した僕に、 佐橋は立ち上がり、僕のすぐ横に跪く。 「ずっと前から、岸野が好きだった」 「え?ずっと前から?だって、佐橋、 彼女いたじゃん。え?意味がわからない」 「最近、岸野が密かにモテ始めてて、 はっきり言って気が気じゃなかった。 誰かと付き合っちゃう前に、 僕がもらいたい。岸野の、処女を」 「誰がモテてるって?知らないんだけど。 あと、童貞じゃなくて、処女?! ますます意味が」 こんな自分がモテてるなんて、 佐橋の妄想が入っているんじゃないのかと、 話しながら頭が混乱していた。 「気付いてないのか‥‥ 同じサークルの河合さんと西野さん、 お前のこと狙ってるんだぞ? 岸野くんかわいいから、付き合いたいって」 「またまた。冗談でしょ?」 ぼんやりと彼女たちの顔を思い浮かべたが、 好みのタイプでもないし、嬉しくなかった。 「佐橋、とにかく落ち着いてよ。 僕はモテもしないし、これからも変わらず 彼女はできない。だから慌てる必要ない。 改めて訊くよ。誕プレは何がいい?」 僕の言葉に、佐橋は溜息をついた。 「僕が勇気を振り絞って言ってるのに、 お前という奴は。僕が女の子と付き合って きたのは、性に奔放だったからじゃない。 お前に片想いしてて辛かったからだよ。 これでも意味がわからないか?」 また、佐橋に手を握られた。 「優しくするから。頼む。岸野」 「優しくするって言われても」 佐橋に見つめられて、ドキドキしていた。 相手が男性とはいえ、初めて告白された。 それも人として魅力的だと認める佐橋から。 僕は少しだけ考えてから、こう答えた。 「じゃあ、キスで良ければ」 普段、他人に歩み寄るのが苦手な自分が、 親友の佐橋に最大限譲歩した結果だった。 「岸野、ありがとう。じゃあ、始めます」 そう律儀に宣言してから、 佐橋が僕の両肩にそっと触れた。 「目を閉じて」 佐橋の顔が近づいてきた瞬間に、 言われるまま目を閉じた。 自分でいいとは言ったが、 僕のファーストキスの相手が 男性である佐橋なんだと思ったら、 複雑な気持ちになった。 こいつは僕のどこに惚れたんだろう。 平凡な外見、奥手で消極的な性格の僕に、 魅力を感じたってことだよな? そうこうしているうちに、 僕の唇に佐橋の唇が、重なった。 ああ。とうとうキスしてしまった。 しばらくこんなことはないだろうし、 感触だけでも味わっておくか。 と冷静に思った次の瞬間。 佐橋の舌が僕の口の中に入ってきて、 驚きの余り、目を開けてしまった。 目の前には目を閉じている、 長いまつ毛の持ち主の佐橋の顔。 当たり前のことに動揺し、 恥ずかしくなって目を閉じた僕は、 佐橋の舌の動きを邪魔しないように 抵抗することなく少しだけ口を開いた。 口の中にも性感帯があるというだけあって、 佐橋のキスによって、 僕はだんだん気持ちよくなっていた。 試しに、佐橋と同じように舌を絡めて、 佐橋の舌を吸い上げながら、 そっと佐橋の背中に腕を回してみた。 「岸野?」 驚いて唇を離した佐橋に、僕は微笑んだ。 「何か、本当の恋人とのキスみたいだね」 「うん」 佐橋は嬉しそうに僕に微笑み返し、 抱きしめてきた。 いつの間にか、 佐橋ともっとキスしたいと思っていた。 僕がキスを仕掛けると、 佐橋が息を弾ませながら、キスを返す。 こんなに気持ちいいとは思わなくて、 抱きしめる力を強めながら、 もっと深くとキスを続けた。 「岸野」 そんなキスの途中で、佐橋が囁いてきた。 「服、脱がない?裸で抱き合いたい」 僕は迷わず、頷いた。 フローリングの床の上に毛布を敷いて、 裸の佐橋と一緒に横になった。 キスはまだ、続いていた。 クーラーのかかる涼しい部屋で、 佐橋はうっすらと汗をかいていた。 僕は佐橋の腕の中にいながら、 佐橋の汗の匂いに欲情していた。 これは想定外のことだった。 あくまでも佐橋とはキスだけで、 佐橋の言う処女を捧げる気はなかったのに。 それから佐橋とキスをする度に、 佐橋はどういう風に抱くのだろうかと 思いを馳せた。 最後まで行けるなら行きたい。 そう言ったら、佐橋はどうするのか。 本当に抱いてくれるのか。 一時の感情で伝えて、後悔はしないか。 そんな気持ちで佐橋とキスを続けていたら、 佐橋に気づかれた。 「もしかして、セックスしたくなった?」 「うん」 佐橋は予測していたらしく、 ローションと指サック、コンドームを 用意していた。 ローションで充分に周りも濡らされてから、 大切な部分をゆっくり佐橋の指で解された。 「‥‥んっ」 初めて指を受け入れたが、怖くはなかった。 佐橋とひとつになるための通過点だ。 「痛い?大丈夫?」 佐橋に気遣われ、僕は首を振った。 「大丈夫‥‥」 「痛かったら、ちゃんと言って」 「うん」 慎重に、数ミリ単位で指先を挿れられた。 それでも指が1本吸い込まれた時には 違和感はなくなり、ある部分への刺激に、 僕は歓喜の声をあげていた。 「はあっ、はあん♡」 息が上がり、甘い声を出している僕を見て、 佐橋はとても興奮したらしく、 「岸野、超エロい顔してるよ‥‥」 と言った。 恥ずかしくなったが、鳴き声は止まらない。 「ああっ♡あっ♡ああん♡」 「岸野、気持ちいいんだね?」 「うん‥‥すっごく、気持ちいい‥‥ ねえ、佐橋‥‥キスして?」 切なくそう囁いた僕に言われるまま、 佐橋は僕の髪を撫で、キスを繰り返す。 佐橋と舌を絡めながら、 佐橋の固くなったモノに手を伸ばし、 ゆっくり扱いた。 「う‥‥んっ」 指先に、先走りの液体の存在を感じた。 気持ちよさそうに深く息を吐いた佐橋に、 囁いた。 「ゴムつけなくて、いいよ」 「え‥‥?」 「佐橋を、感じたいんだ」 「岸野」 腕を伸ばして、佐橋を強く抱きしめた。 「もう、挿れていい?」 そう言って佐橋が、 僕の大切な部分に自分のモノを擦り付ける。 「うん」 みちみちっと音を立てて、 佐橋が僕の中に入ってきた。 「岸野、愛してる」 そう言われた後に降ってきたのは、 佐橋からの情熱的すぎるキスの嵐。 僕は感激していた。 セックスって、 単に挿れられるだけが快感だけじゃない。 髪を撫でられながらキスをして、 いろいろなところを触れ合って、 築き上げていくものなんだと思った。 僕の初めてが、佐橋で良かった。 「佐橋、ありがとう」 セックスの尊さを教えてくれた佐橋に、 親友以上の愛しい気持ちを感じ始めていた。 佐橋はゆっくり腰を動かしながら、 唇を触れ合わすだけのキスを続けている。 佐橋がこんなにラブラブなセックスを する奴だとは、思わなかった。 日頃の佐橋は、 少しやんちゃでそしてかなり明るい。 楽しいことが大好きで、 情緒とか人の機微とかそういうものは、 あまり重視しないように見えていた。 たった一度のセックスで終わらせたくない。 「佐橋」 「ん?どうした」 再び、佐橋の首筋に抱きついて言った。 「僕も、愛してるよ」 「岸野?!」 目を見開き、明らかに驚いている佐橋に、 柔らかくキスをした。 「僕と付き合ってください」 ずっと愛し合いたい。 僕の心は、佐橋への愛で満たされていた。
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