3話 都合のいい話

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「ちょっと! めっちゃ言うじゃない!? もうちょいないの!? 慰めの言葉とか、褒められて伸びるタイプかもよ!?」 不毛な言い争いを続ける。 屁理屈述べるクリスと違いちゃんとした意見を通す妖精がやや有利。 言い争いに夢中になり、大荷物背負ったアーサーが部屋に入ってきてることにも気づかない。 「おい。 大丈夫か? 死なねーよう手加減はしたつもりだが、頭の方がおかしくなっちまったのか?」 「うひぃあっ!? もう! ちょっと!! いっつもいつっも、不意打ちやめてよね!?」 完全に八つ当たりだ。 「え? あー声かけたつもりだったんだけどなぁ。 わりぃ。 それより話があんだ。 来てくれ」 「何?」 着いたのは人気の少ない、老朽した街の南端。 昔使われた街の出入口。 「でなんなの?」 腰に手を置き、唇を尖らせながら不機嫌そうに言う。 「俺はな小さい頃はあんま闘技とか好きじゃなかったんだ」 彼女は今ので悟った。 あ、自分語りが始まる、と。 「五年前、親の意向であの闘技大会を見に行ったんだ。 そん時優勝したのが旅の剣闘士。 俺その人の戦う姿を見て憧れっちまってよ。 その日から乗り気じゃなかった稽古も真面目にするようになった。 そして俺もいつか、あの人みたいに強くなって、世界中を旅したいって思ったんだ」
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