1話 少女の旅立ち

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「・・・・! ありがとう、ベリアル」 彼は知りたかった。 何故あのような目を向けられたのか。 どす黒い感情を浴びせられたのか。 知りたいのだ。 人を殺さない盗賊団のことを。 あの少女のことを。 そして思う。 何時が再びあの少女と(まみ)える。 その時を。 深く、深く。 沈み込んだ意識の底。 浮上することなど叶わないは筈の、冷め切った暗闇。 その中で、彼女は目覚める。 「ん・・・・・・」 「ようやくお目覚めか?」 不意にかけられる声。 焦点の合わない瞳でなんとか視線を向ける。 そこにいたのは良く見なくとも分かる、自分にそっくりな誰かさん。 「わあぁーー!!!? わぁあ!? えっ? 私ぃ!? な、なななんで!? ってか何処ぉー? はっ!? 天国!? え、違う!? 地獄か!!?」 理解できない状況に、戸惑うを超えてパニックになる。 ・・・もしかしたら、パニックを超える騒がしさかもしれない。 「あー、うるさいうるさい! 少し黙れ! お前の分からんことは全部教えてやる。 ほら! ここ座れ!」 そっくりさんは彼女の足元をバシバシ叩く。 クリスは言われるがまま、大人しく座った。 「よし、ここは天国でも地獄でもない。 そうだな・・・そうだ、心の中の世界・・ってとこだな。 それと、そうか。 私はお前の心の中の世界に住む妖精・・みたいな感じだ。 どうだ? これで満足か?」
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