1話 少女の旅立ち

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「もっとこう、落ち込んだりうじうじすると思っていたのに。 で? 何すんだ?」 妖精は彼女の思考が読めるのだろうか。 分かっているような口振りで彼女に尋ねた。 「うん! 復讐するよ。 私の大切な人たちを奪った私兵団に。 あの白い外套の男に」 彼女に迷いはなかった。 真っ直ぐと。 澄んだ目をして。 「ふふ、ははは。 あははははははははっ! お前面白いなぁ! そんな顔で復讐しますーだなんて、お前以外言わないぞ!?」 妖精は腹を抱えて笑っている。 そこまでかな・・・? あまりのおかしさに目に涙を浮かべている。涙を拭い、一つ深呼吸。 「それじゃあ、寝こけてる場合じゃないよな。 復讐者」 「そうね、どうしたらここから出られるの?」 「言ったろ? ここはお前の心の中だ。 念じればいつでも出入りできるさ。 あっでもひとつ注意。 ここに来ている間、現世に肉体は残る。 その時のお前は抜け殻みたいになるから。 時と場所を選べよ」 妖精は彼女にしかと指を差し、注意深く言いつけた。 「分かった。 ありがとう妖精さん。 最後に私からも一つ!」 彼女は真似をするように、妖精の顔に向かって指を差す。
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