2話 大貴族の御曹司

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2話 大貴族の御曹司

神々の骸の上に出来上がった地、大界。 大いなる時の流れと共に築かれた三つの国。 グランディア王国。 ファリム王国。 そして今彼女の住まう国、聖ドゥーラ帝国。 そのうちに存在する街のひとつ闘技の街コスタ。 空腹八分目の彼女は歩く。 「ねえ妖精さん? 貴女のこと、なんて呼べばいい? 変わらず妖精さん? っていうか貴女とはいつでも話ができるのね」 暇なのか彼女はとにかく妖精に話しかける。 その顔は酷くくたびれている。 『私の声はクリスにしか聞こえないんだぞ? 不審に思われたくないならやめることだ それより、いい仕事は見つかったのか?』 「うーん、まだ」 『だよな』 街に着く頃には、既に夜が明けていた。 到着から三時間。 ただ闇雲に足を動かしているだけである。 「だってぇ、はあぁ」 彼女は葛藤していた。 今まで人の為に盗みをして来た、盗賊団。 その残党とも言おうか。 まあ、その中には多少自分たちの為のものもあった訳だが。 そんな彼女の自分自身の為の盗み。 善しか悪しか。 だって、やっぱり下働きなんて面倒だし。 知らない人の下につくのも(かん)に障る。 そろそろ何か食べたい・・・・。 「あ・・・」 彼女は足を止める。 そして見た。 天から舞い降りた、一条の希望の光を。
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