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「え、え〜・・・」
たどり着いたのは、街のおよそ北西。
荘厳かつ壮大。
歴の深いであろう旧式の屋敷。
彼女はそんな大豪邸を前にしてほんのちょっぴり臆していた。
屋敷は何度も見れど、ここまでのものは初めてだったから。
「あ、あのさぁ、貴方名前なんて言うの?」
恐る恐る尋ねる。
「アーサー=フォルク=リーヴ。
この家の次代の当主・・・ってことになってる」
「あ、ふーん。
そっか。
だからこんな大豪邸・・。
そっかぁここだったのかリーヴ家って」
彼女はほんっっとに不謹慎ながら、昨晩ここに来なくて、来れなくて良かったと思った。
来ていたらきっと、身体が強張って上手く動けてなかっただろう。
なんて情けない盗賊だ。
名乗る前に据わった肝っ玉用意しとけってんだ。
「父上らに事情を説明してこよう。
ここで待っていてくれ」
そう言うとアーサーは、足早に屋敷の中へ入ってしまった。
・・・・こんな所で独りにしないで欲しい。
「すまない。
待たせたな。
レディ、名前を聞かせていただけないか?」
十分程で屋敷から出で来た、アーサー。
彼女に名を尋ねる。
突然だったので、少し驚いた。
「え?
ああ、そうね。
クリスよ」
「そうか。
レディ・クリス、許可が降りた。
さあ、中へ」
彼女は案内されるまま、屋敷の中へ踏み込む。
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